研究トピックス

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低温ナノ空間における3塩基DNAの二本鎖形成

茨城大学理学部の山口央准教授,東北大学の寺前紀夫教授,佐藤雄介助教,荒船博之博士(現鶴岡高専助教),産業技術総合研究所の伊藤徹二主任研究員などは共同で,0℃以下の低温ナノ空間を利用することで短いDNA鎖同士の二本鎖形成が可能であることを実証しました。

 DNAは複数の核酸塩基が鎖状につながったひも状分子であり,2本のDNA分子が塩基選択的な水素結合を介して二重らせん構造(二本鎖)をとることが良く知られています。しかし,構成する核酸塩基の数が少ないほど二本鎖構造は不安定となり,3つの塩基からなるDNA(3塩基DNA)分子同士の短い二本鎖を一般的な試験管の中で形成させることは不可能でした。
 本研究では,メソポーラスシリカと呼ばれる多孔性材料が内包するナノメートルレベルの微小空間の「サイズ」,および微小空間での「過冷却現象」を利用することで,3塩基DNA分子同士の二本鎖形成が可能となることを見いだしました。  細胞中においては,DNAに類似したRNAの短い二本鎖形成がタンパク質の合成など様々な反応に関与しています。DNAの短い二本鎖を人工的に作り出した本研究の成果は,DNAやRNAの構造と機能の解明研究に寄与すると考えています。また,新しいナノ材料開発への波及も期待されます。

この研究成果は,2014年10月13日付の英国科学誌「Nature Communications」のオンライン版に掲載された。

【図説】 メソポーラスシリカ細孔(微小空間)における3塩基DNA二本鎖形成のスキーム

掲載雑誌へのリンク

研究室HP

原始光合成の姿

光合成は太陽の光エネルギーを集めることから始まり,光電変換を経て生物が利用可能な生体エネルギーで二酸化炭素から有機化合物への合成を行います。大友征宇(理学部教授)が参画する茨城大学と京都大学の研究チームは,自然界最古の光捕集と光電変換を司る分子機械の立体構造を明らかにしました。研究成果は,2014年4月10日にイギリスの科学雑誌"Nature"にて発表されました。

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【図説】左の図は葉緑素のような色素分子(赤とマゼンタ色)とタンパク質からなる複合体の形を表します.右の図は光を集める色素分子(リング状)と光電変換を行う色素分子(向かい合った2分子)だけを示しています.

研究論文の日本語要約(Nature誌ウェブサイト)

茨城大学理学部大友研究室HP

アルマ望遠鏡が見つけた巨大惑星系形成の現場

茨城大学理学部の百瀬宗武教授・塚越崇研究員は、大阪大学、自然科学研究機構国立天文台などとの共同研究チームで、アルマ望遠鏡を使った観測により、親星から遥か遠く離れた場所で惑星が誕生しつつある強い証拠を初めてとらえました。これは太陽系の形 成理論の想定を塗り替える結果であり、宇宙における惑星系の多様性の起源に迫るものです。

研究チームは、アルマ望遠鏡を用いて、おおかみ座の方向にあるHD142527と呼ばれる若い星を観測し、惑星の材料となる固体微粒子が星の周囲で非対称なリング状に分布している様子を確認しました。そして、固体微粒子が最も濃く集まった領域の密度を測定した結果、この場所で惑星が生成しつつある可能性が高いことが分かりました。この高密度領域は中心の親星から遠く離れており、その距離は太陽から海王星までのおよそ 5倍にも相当します。これほどの遠方で惑星が形成しつつある証拠が見つかったのは、初めてのことです。

研究チームは今後もアルマ望遠鏡を使ってHD142527での惑星形成プロセスを更に詳細に調べるとともに、多くの原始惑星系円盤の観測を行い、若い星の周りでどのように惑星形成が進むかの全体像を明らかにしたいと考えています。

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【図説】HD142527を取り巻くガスと固体微粒子の円盤。アルマ望遠鏡が観測した固体微粒子の分布を赤色、ガスの分布を緑色、すばる望遠鏡が近赤外線で観測した円盤を青色で表示している。固体微粒子が北側(画像上)に多く集まっている様子がよくわかる。
Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), NAOJ, Fukagawa et al.

国立天文台HP(2014年1月17日掲載記事)

国立天文台アルマプロジェクトWebページ

天空上で輝く巨大な爆発波のガンマ線撮像に成功

茨城大学理学部の片桐秀明准教授は、イタリアの国立核物理学研究所(INFN)、青山学院大学、米国のSLAC国立加速器研究所などとの共同研究チームで、「はくちょう座ループ」という超新星残骸のガンマ線画像の取得に成功しました。

宇宙空間には、宇宙線という非常にエネルギーの高い粒子が存在しています。そのような粒子の一部は、超新星爆発という星が死を迎える時に引き起こす大爆発のエネルギーによって生成されています。生成された粒子は、周囲のガスなどと反応して高エネルギーガンマ線を発生させています。2008年に打ち上げられたフェルミ・ガンマ線衛星によって、そのようなガンマ線源がいくつか見つかってきました。ところが、それらのガンマ線のスペクトル(エネルギー分布)をよく見ると、奇妙な折れ曲がりがあることが分かってきました。

その折れ曲がりは、生成された宇宙線が時と共に爆発波から抜け出して拡散していく効果によって作られたという説(拡散説)などがありますが、諸説あり、まだはっきりしていません。折れ曲がりの起源を明らかにするには、ガンマ線の空間分布が役に立ちます。

研究チームは、フェルミ衛星のデータを用いて「はくちょう座ループ」と呼ばれる超新星残骸に着目しました。「はくちょう座ループ」は見た目の大きさが約3度(月の約6倍)もあり、ガンマ線を放射する超新星残骸の中では最も大きいため、詳細な空間分布を議論するのに適しています。データを詳細に解析した結果、「はくちょう座ループ」では、スペクトルの折れ曲がりは拡散説では難しいことが分かりました。

天空上で輝く巨大な爆発波のガンマ線撮像に成功

詳しくはこちらをご覧ください。

http://golf.sci.ibaraki.ac.jp/member/katagiri/articles/110926/1109_cygnus_loop.htm

野口高明教授が参加している「はやぶさ」プロジェクトが文部科学大臣と宇宙開発担当大臣から表彰されました。

世界で初めて小惑星から物質を持ち帰った小惑星探査機「はやぶさ」に携わった119機関が、政府の宇宙開発戦略本部と文部科学省から表彰されました。理学部から微粒子観察・分析に参加している野口高明教授は12月2日の表彰式に出席し、文部科学大臣および宇宙開発担当大臣からの感謝状を受領しました。

野口高明教授が小惑星探査機「はやぶさ」が持ち帰った微粒子を解析

JAXAの小惑星探査機「はやぶさ」は2003年5月に打ち上げられ,地球と小惑星イトカワとの7年に及ぶ往復飛行を行い,2010年6月に地球にサンプルが入っていると期待される容器を持ち帰りました.本学理学部の野口高明教授は,容器が日本に持ち帰られた場合に備えて,JAXA宇宙科学研究所内に設置されたサンプルキュレーション施設において2008年よりトレーニングを積んできました.開封作業からイトカワにより持ち帰られた微粒子の取り出し・走査型電子顕微鏡観察・分析などに従事しています.そして,JAXAや他大学のキュレーション担当者とともに,容器内に存在した1,500個程度の微粒子の分析から,それらの大部分が小惑星イトカワ由来であると判断しました.今後,初期分析班員として,野口教授はイトカワ由来の試料の透過型電子顕微鏡による観察・分析を担当することになっています.

「はやぶさ」が小惑星イトカワから持ち帰ってきた微粒子

「はやぶさ」が小惑星イトカワから持ち帰ってきた微粒子

JAXA提供

すばる望遠鏡で重い星に伴う星周円盤の赤外線直接撮像に成功

茨城大学理学部の岡本美子准教授と百瀬宗武准教授は、宇宙航空研究開発機構などとの共同研究チームで、大質量星としては初めて、星周円盤の赤外線直接像の取得に成功しました。

太陽の8倍以上の質量を持つ星は大質量星に分類されますが、その形成過程については諸説あり、まだはっきりはしていません。有力なものとして、より軽い小質量星と同様に、星の周りに円盤(星周円盤)ができ、これを通して物質が星に降り積もるという降着説があります。小質量星では、このような円盤の像が可視光や赤外線域で多数とられ、星や惑星形成の理解が進んでいます。一方で、大質量星の場合は、誕生直後は分子雲に深く埋もれているために観測が難しい上に数が少なく、また進化も早いため円盤を伴う時期をとらえるのが難しいため、詳細な円盤像は得られていませんでした。

研究チームは、すばる望遠鏡とその中間赤外線観測装置COMICSを用いて、太陽の10倍程度の質量を持つ、生まれたばかりだが周りが晴れ上がりつつある大質量星HD200775の周囲を波長8-25マイクロメートルの赤外線で撮影することで、ついに鮮明な円盤像を得ることに成功しました。

すばる望遠鏡で重い星に伴う星周円盤の赤外線直接撮像に成功

詳しくはこちらをご覧ください。

http://subarutelescope.org/Pressrelease/2009/11/18/j_index.html

ショウジョウバエの生殖幹細胞の安定的な細胞株の樹立に成功

茨城大学理学部 の仁木雄三助教授とシカゴ大学のグループがショウジョウバエの卵巣から採取された幹細胞が安定的に培養できることに成功し,その成果がProc. Natl. Acad. Sci. USA,October 20, 2006号に掲載されました。

すべての生物の最も根源的な性質は、子孫を作ることです。子孫を作るためには、メスでは卵、オスでは精子と呼ばれる生殖細胞が必要です。精子をはじめ、血液、皮膚、神経などが、生涯を通じ、作られ続けているのは、これらの細胞は、それぞれの幹細胞(自己再生能と分化能を持っている細胞)が存在するためです。現在、胚性幹細胞(ES細胞)などの幹細胞を利用した再生医学が注目を浴びていますが、発生の過程で、幹細胞がどうやって形成され、維持・増殖しているのかその実態は明らかになっていません。モデル生物であるショウジョウバエでは最も研究が進んでいますが、大量に幹細胞を集めることができなかったため、幹細胞でどのような遺伝子が働いているのか調べるのに障害がありました。今回、安定的に幹細胞が培養できるようになったことにより、分子レベルでの解析が可能となりました。また、ショウジョウバエ、マウス、ヒトなどを含めた幹細胞特有の遺伝子発現パターンなどの研究や、希少動物の保存技術にも貢献できます。

ショウジョウバエの生殖幹細胞の安定的な細胞株の樹立に成功

関連リンク:

PNAS論文要約  http://www.pnas.org/cgi/content/abstract/0607435103v1

・関連リンク: 理学部生物・仁木研: http://stars.sci.ibaraki.ac.jp/~niki/

地球内部の含水ケイ酸塩メルトは常識より"重い"

茨城大学理学部 の松影香子講師は、米国Yale大学唐戸俊一郎教授らと、地球の深さ約400kmの温度圧力条件で、含水珪酸塩メルトの密度を測定しました。メルトは、固体に比べて移動速度が速いため、地球内部で様々な液相濃集元素を濃集、拡散させる重要な担い手であると考えられています。どんな元素が地球内部のどの部分にどの程度濃集するかを考える時、メルトが周囲の固体に対してどのような密度を持っているかが重要になってきます。

この研究では実際に地球深部に存在すると思われる含水超塩基性珪酸塩メルトの密度をマルチアンビル高圧高温発生装置という実験装置をもちいて10-16万気圧、1900℃で決定し、含水メルト中のH2O成分の地球内部での部分モル体積を世界で初めて見積もりました。そして含水超塩基性珪酸塩メルトは地球の深さ410km付近で、今までに予想されていたよりも"重い"ことがわかりました。この結果は液相濃集元素やH2O成分が地球深部に溜まる可能性があることを示唆しており、地球の化学分化を考える上で重要な制約条件を与えます。本研究は英科学誌ネイチャー2005年11月24日号に掲載されました。

松影香子(K. N. Matsukage)/茨城大学

景志成(Z. Jing)・唐戸俊一郎(S. Karato)/Yale大学

Nature, vol 438, 24, 488-491 (24 November 2005)

・関連リンク: 茨城大学理学部 自然機能科学科 宇宙物質学講座のページへ

英国王立協会でのシンポジウムに招待講演

茨城大学理学部 の天埜尭義教授(現名誉教授)が,2006年1月16日ー18に開かれる英国王立協会ディスカッションミーティングでの「H3+の物理,化学,天文学」に栄誉ある招待講演を行う.関連領域であるが,天埜教授のCH5+についてのコメントは,アメリカ化学会発行のChemical and Engineering News, 2005年7月25日号(Volume 83, 45-48 page)にも掲載された。

詳しくは、こちら を御覧下さい。

・関連リンク: 茨城大学理学部 自然機能科学科 宇宙物質学講座のページへ

がか座β星に「微惑星帯」を発見

茨城大学理学部 の岡本美子助手、宇宙航空研究開発機構の片ざ宏一 助教授、および、東京大学、国立天文台の研究者からなる研究チームは、 ごく若い惑星系を持つと思われる がか座β星 の周りの塵の円盤を すばる望遠鏡の中間赤外線観測装置COMICSで観測しました。その結果、 小天体がリング状に分布した「微惑星帯」から出ていると考えられる、 3重のベルト状の塵の分布を世界で初めて発見しました。 本論文は英科学誌ネイチャー2004年10月7日号に掲載されました。 詳しくは、 こちら を御覧下さい。

・関連リンク: 茨城大学理学部 自然機能科学科 宇宙物質学講座のページへ

Nbs1は高等脊椎動物の細胞での相同組換えによるDNA修復に不可欠である

Nature vol.420, p.93-98 (2002年11月7日号)

田内 広 (H.Tauchi) / 茨城大学理学部 他

遺伝子の本体であるDNAは二重らせん構造の高分子である。電離放射線に被曝した場合やDNAの複製の際にはDNA二重鎖の切断がおこる場合がある。このようなDNA二重鎖切断は、ほとんど全てが再結合(修復)されることによって我々の遺伝子は安定に保たれている。この二重鎖切断を修復できる経路には、末端同士をそのまま再結合させる「非相同末端結合」と、コピーを使って正確に修復する「相同組換え(HR)」の少なくとも2つが存在する。この2つの経路は本来、互いに無関係だが、酵母ではMre11、Rad50、Xrs2というタンパク質の複合体が両経路に関与している可能性が指摘されている。脊椎動物ではNbs1と呼ばれるタンパク質がXrs2の役割を果たしており、Nbs1に異常が起こるとナイミーヘン症候群という高発がん性の遺伝病を引き起こすことが知られている。脊椎動物の細胞においては、Mre11欠失変異およびRad50欠失変異が致死的であるため、二重鎖切断の修復にMre11-Rad50-Nbs1複合体がどんな働きをしているかは正確にわかっていない。本論文では、高等脊椎動物の細胞においてはHRの関与する修復にNbs1が不可欠なことを報告している。Nbs1を破壊した細胞では、他のHR欠損変異体と同様に、遺伝子の組込み反応や姉妹染色分体交換が抑制される。実際、部位特異的なDNA二重鎖切断修復の分析から、Nbs1破壊細胞では、こうした切断の発生後に起こるHR現象が著しく減少するのが観察された。Nbs1破壊細胞でまれに起こる組換えには異常構造が見られることが多かったが、これはおそらく通常では起きない乗換えで生じたと思われる。このことから、Nbs1複合体は従来から考えられていたようなDNA切断端の処理に加えて、HRにおける組換え中間体を処理するのにも必要なのではないかと考えられる。