高校生の皆さんへ

理学部長

岡  田      誠 

高校生の皆さんへ

大学には実に沢山の学部がありますが、いずれも一つの共通点があるのはご存じでしょうか。それは、殆どの学部が直接人間の役に立つことを対象にしているという点です。例えば、医学部や薬学部は人間の病気や怪我の治療技術を、工学部や農学部は人間が生きてゆく上で役に立つ技術の開発が主な目的です。教育学部は人間の教育をする人を育てる所ですし、人文学部や社会学部などはいずれも人間の生活を豊かにすることが目的です。ところが理学部はどうでしょうか?実は理学部だけが、対象が人間そのものではなく、人間も含んだ「自然」全体なのです。

いまこのページを読んでいる皆さんは、きっと理科や数学が好きなのでしょう。理学部であつかう自然科学の分野は、物質やエネルギーの本質を突き詰める物理学、物質同士の結びつきの関係を解き明かす化学、生命現象の本質に迫る生物学、地球や宇宙の成り立ちを解き明かす地球科学、それら自然科学全体を記述する共通言語である数学にわかれています。みなさんの「好き」を突き詰められる分野が、きっとこの中にあります。

みなさんが好きなことをする時、ワクワクしませんか?それが好奇心です。人類の科学がここまで発展し、そしていま発展し続けているのも、その原動力は好奇心。科学の発展は、人間生活をかつてないほど豊かにしましたが、一方では行き過ぎた開発のため自然環境を破壊し、人間生活を脅かすようにもなっています。なぜそんな事になっているのでしょうか?一つの原因は、科学の発展に伴い、科学の分野が細かく分かれすぎて、それぞれの最先端を突き進む科学者には他の分野の世界が見えなくなってしまったからでしょう。例えば、効率よく大きなエネルギーを得るため石油など化石燃料を燃やし続けた結果、地球環境にどのような影響が出るのかについて無頓着であり続けたことなど。好奇心なくして科学の発展はありませんが、現代の科学者は、好きなことだけやっていればよいというのではダメなのです。

茨城大学理学部の目標は「理学スペシャリスト」を育てることです。理学スペシャリストとは、未知の課題に挑戦できる人であり、同時に全体を見渡すことができる人です。本学の理学部にはみなさんの好奇心に答えるさまざまな研究室がある一方、1年生から幅広く自然科学全体を学ぶことができるカリキュラムが用意されています。研究室での成果は直接人間の役には立たないかもしれませんが、人類初の大発見が待っているかもしれません。みなさんはそこで、思いっきり未知の課題に挑戦してください。そして、その成果が人間社会や地球環境全体に与える影響について考えることができる人になっていただきたいのです。

みなさんとともに挑戦できる日を心待ちにしています。