物理学コース

物理学コースの特色

物理学コースがめざすもの

20世紀初頭の量子力学の建設によって幕を開けた現代物理学は、私たちの自然観を根底から変え、さらに現代社会をささえる科学技術の発展をもたらしました。 20世紀は自然を構成する基本物質と力の究極の姿を探る素粒子物理学、多様な物質の性質を理解し、未知の物質を探求する物性物理学、宇宙の進化と構造を解明し、宇宙空間の物質を研究する宇宙物理学などが発展しました。21世紀においても、物理学自体の発展とともに、量子化学、生命科学などの自然科学・科学技術の基礎としての物理学の役割はますます重要になっています。 当コースは、先端科学の分野で活躍する教員グループによる自然科学・科学技術の発展に即した体系的な物理学の教育プログラムに基づいています。 現代物理学の専門知識と方法を修得し、物事を論理的・体系的に把握すると同時に、さまざまな課題に専門性を生かした柔軟なアプローチができる人材を育てます。

教育内容の特徴

1年生から2年生にかけては、古典物理学の理解を図ります。具体的には、力学、電磁気学、熱力学、波動について学びます。内容は高等学校で学んだものの発展ですが、現代物理学を学ぶ基礎にもなります。また物理を学ぶのと並行して、物理学で扱う現実世界を表現するのに必要な数学の基礎も学びます。 2年生後期からは、最先端の物理学研究でも基礎となる量子力学、統計力学、相対論などを学びます。これらは、自然界の幅広い階層を理解し、素粒子・物性・宇宙といった各分野の最前線の知見を理解し活用していくために必要なものです。 カリキュラムでは、講義だけでなく、演習や実験もふんだんに含まれます。物理学やそれに必要な数学を身につけるための練習や、難しい概念を自らの手で確認する場を通じて、より確かな理解の獲得を目指します。これらの科目では、教員と密に触れ合いながら、きめ細かい指導が受けれるようになっています。

研究室での研究内容

素粒子理論

私たちが普段何気なく手にする身のまわりの様々なもの、これらは何から作られているのでしょうか。私たちを取り巻く広大な宇宙は、一体どのようにして生まれ、この先どうなるのでしょうか。そもそも、私たちの住むこの世界とは、一体何なのでしょうか。そして、そこにはどのような物理法則が支配しているのでしょうか。これらの疑問を追求するのが、素粒子物理学です。私たちは、これらの広い範囲を研究テーマとする研究者が協力して教育、研究にあたっています。みなさんも是非この素粒子物理学というexcitingな研究分野に進み、われわれと一緒に物理学の楽しさ、深遠さを学ぼうではありませんか。

素粒子実験

素粒子標準模型を超える新しい物理を「加速器ビームを駆使した実験」により観測することを目指しています。 茨城県東海村にあるJ-PARC(大強度陽子加速器施設)の中にあるビームラインの一つに独自の実験装置を設計・製作中で、2028年頃のデータ取得を予定しています。目下、実験装置建設中の今なら、自分のアイデアを実験装置という形にして世に送り出すチャンスもあります。世界中から新物理探索を目指す研究者が集まる環境で、素粒子物理の最先端を極めませんか?

物性理論

現代のハイテク社会を支えているのは、さまざまな機能をもった物質材料です。例えば、テレビやコンピュータは半導体の存在なしには考えられません。物質科学とは、物質の性質を理解するとともに、未知の可能性を追求する科学ということができます。その基本が物性物理学です。物性物理学は、半導体・超伝導・DNAやタンパク質...など幅広い物質と現象を研究対象にしています。1023個もの多数の原子の集合である物質には、個々の原子から想像できないような驚くべき性質が現れます。その神秘さと可能性を一緒に追究し、21世紀の科学に貢献していきましょう。

物性実験

私たちのまわりには、いろいろな物質があふれています。これらの物質は原子からつくられています。原子の種類は約100種あまりありますが、身近に存在している原子の種類は非常に限られています。無限とも思える数の物質が限られた種類の原子から生まれてきます。私たちは新しい性質を示す物質の開発をめざして、種々な化合物の作製とその物理的性質の測定を行っています。このような研究を通して、身の回りの物質の性質を原子スケールで理解できる素養を身につけ、住みやすい環境の世界をつくることに貢献してゆきませんか。

電波天文観測研究室

天体や宇宙の物質は遥か彼方にあります。もちろん手に取って調べる事はできません。ではその性質をどう調べるのでしょう?それを可能にするのが、まさに物理学なのです。宇宙からのささやかな信号を、物理実験の技術を駆使してキャッチし、それをじっくり考えてみる...巨大な世界に向かってあなたの五感をフル回転させる経験は、将来、社会で未知の問題に取り組むとき、きっと大きな財産になるはずです。

高エネルギー宇宙物理

私たちは波長の短いガンマ線という光で、宇宙を観測しています。ガンマ線で宇宙を見ると、超新星爆発(星が死ぬときに起こす大爆発)などによって超高エネルギーの粒子である宇宙線が作られているのが見えてきます。どのような天体・どのような法則でこのような現象が起こっているかはまだよく理解できていません。私たちは、宇宙線の謎を解き明かそうと、時には、観測装置を開発し、時には観測データを分析し、物理学の目を通して研究しています(詳しくはこちら)。また、宇宙観測の技術を生かしてガンマ線カメラなどの放射線測定器の開発もしています。

物理学コース修了者の進路

本コースで学んだ学生の皆さんには、技術系公務員、情報関連産業、半導体や新素材などの先端科学産業の分野への就職のほか、「理科」の教員免許(中学校一種免許状・高等学校一種免許状)を取得し、理系教員になる道が開かれています。また、大学院に進んで、さらに高度な専門性を身につけることが可能です。